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『ジョゼフ・フーシェ ある政治的人間の肖像』シュテファン・ツワイク

オーストリアの伝記作家による評伝です。

ナポレオン時代の名外交官タレーランと双璧をなすフーシェ。なんとなく陰気な感じもありますが、本書では世界史上最高のマキャべリストのひとりと評価されています。


Baron Otranto / Stifts- och landsbiblioteket i Skara


◆概要

Amazonより
「サン=クルーの風見」。フーシェにつけられた仇名である。フランス革命期にはもっとも徹底した教会破壊者にして急進的共産主義者。王制復古に際してはキリスト教を信ずることのきわめて篤い反動的な警務大臣。フーシェは、その辣腕をふるって、裏切り、変節を重ね、陰謀をめぐらし、この大変動期をたくみに泳ぎきる。



◆1 人物像

フーシェの陰気な印象が描写されています。
誰でも彼に会ったものは、この男には熱い赤い血がめぐってはいないのだ、という印象を受けた。そして実際、彼は精神的にも冷血動物の種属なのだ。我を忘れるようなはげしい情熱も知らないし、女にも賭博にも気を向けたことはなく、酒もたしなまないし、贅沢は嫌い、筋肉を動かしたこともなく、ただただ部屋のなかにくすぶって、記録や書類に埋もれて暮らしているだけである。怒りを表にあらわさず、顔の筋一つ動かさない。時にはうやうやしく、」時にはさげすみながらちょっと微笑する時だけは、この薄い、血の気のない唇がかすかに動く。見たところしまりのない、鉛色のこの仮面の下に、真実の緊張が隠れていることは、だれも気がつかない。ふちの赤い重いまぶたの下の眼をうかがっても、彼の意図がどのへんにあるかはまったく見当もつかず、その動作を見ても彼の考えはわからないのだ。


◆2 フーシェの仕事術

事態をコントロールする手法が語られます。
仕組みの作り方、面従腹背の技法。

フーシェはそもそものはじめから万一の失脚の場合を考えていた。免職になったら、自分が組み立てた機械を即刻動かなくするには、ちょっと手で触れれば事足りることを、彼は知っている。なぜなら、この権勢欲の権化がこんな機械を作ったのも、国家のためでも総裁政府のためでもナポレオンのためでもなく、まったく自分ひとりのためだったからである。

フーシェはナポレオンの人となりをじゅうぶん知っているから、いろいろな意地張った意見を言われても、自分の意見を押し付けようとは夢にも思わぬ。帝政時代の従順な大臣連や、その他すべての阿諛者と同じに、唯々諾々と命令は受けてはいたが、ただちょっとばかり違った点があったというのは、彼はかならずしもこれらの命令に従わなかったことである。

フーシェは皇帝に対しても、またその他のなんぴとに対しても、いついかなる時も、自分の真の意図や仕事を打ち明けたことはない。厖大な報告材料から、選りに選って自分の気に入るものだけしか、彼は人手に渡さないのである。


◆3 かけあい

ナポレオンとの掛け合い。伝記的脚色っぽいですが、つまりナポレンがこのように描かれるほどにフーシェ、タレーランの権勢があったということが伺えます。
こうなっては皇帝はもう我慢できなくなった。「フーシェ、君は裏切り者だ」とどなりつけた。「君の首をしめあげて殺してしまうところなのだが。」
するといささかも動ずる気色もなく、冷血無類の大臣は冷然と答えたのである。「恐れながら私は陛下のお考えとは所見を異にしているのでございます。」

こちらはタレーランのエピソード。
こういう下劣な罵詈雑言を侮辱と感ずるには、あまりにも気位が高かったのだ。大荒れに荒れたあらしがやむと、彼は黙ったまま滑らかな板敷きの上をびっこを引きながら退出し、それから控えの間で、鉄拳をむやみやたらに振り回すよりも、もっと致命的な傷を与える例の寸鉄殺人式な言葉をひとことだけ吐いたのであった。「ああいう偉大な人が、育ちが悪かったのはまことに残念なことだ」と、従者に外套をかけさせながら平然として言ったのであった。



◆感想
なんとも濃厚な一冊ですが、冗長に感じる部分はごく一部で、時の権力者を手玉に取る様子、自分に都合のいい=バカ正直でない勤めぶりは大いに参考になりました。「受けた命令に必ずしも従わない」「ボスに上げる情報を自分にとって都合がいいよう選別する」など、正統派ビジネス書とは一味違うものがあります。


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